「熱中症」と聞くと夏に陥るものだ…というイメージを持つ方も多いですよね。
しかし実際には、動物病院に犬や猫などが熱中症の疑いで運び込まれるのは、夏よりも春が多いんです!
今回は、動物病院での勤務経験のある筆者が「ペットを熱中症から守るポイントについて」解説します。
応急処置の方法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みいただければ幸いです。
ペットの熱中症が春に多い理由
春といえば暖かくて1年の中でも比較的過ごしやすいイメージですよね。
しかし、冒頭にも少しお話したようにじつは動物病院へ熱中症で運ばれてくる子は、夏よりも4月中旬〜5月初旬が圧倒的に多いのです。
なぜ犬や猫は、春に熱中症になりやすいのでしょう?詳しくお話していきます。
理由1:換毛が完了していない
ワンちゃんや猫ちゃんの種類にもよりますが、多くの子はこれから来る夏の季節に向けて毛の生え替わりがありますよね。
春の換毛期は大体5月〜7月にかけてが一般的なので、春はまだ換毛が完了していないということになります。
人にとっては「気持ちいい」と思う気候かもしれません。
しかし、いまだに冬の毛を纏った犬や猫にとっては暑いかもしれないということを覚えておきましょう。
理由2:風通しが悪くなりがち
春は過ごしやすいと思う人もいる一方、「花粉症だから困る」という人もいますよね。
外から花粉が家の中に入ってくるのを防ぐため、ずっと窓を閉めている…というご家庭も多いかと思います。
こうして、窓を閉め切ったまま出掛けてしまう飼い主さんも決して珍しくはありません。
しかし、先ほどもお話したように、春は換毛が完了していない子たちがほとんどです。
いくら春とはいえ閉め切った部屋は彼らにとっては過ごしづらく、暑さを感じている場合もあることを心に留めておきましょう。
理由3:飼い主の油断
繰り返しになりますが、春の季節は人にとっては心地良い気温ですよね。
そのため、飼い主さんはつい「ペットも今は過ごしやすい」と勘違いしてしまいがちです。
この季節に特に多いのが「愛犬を車で待たせる」というケース。
夏は「危ない」とわかるのですが、春の時期は「まだ大丈夫だろう」と飼い主さんも油断してしまうのですね。
実際に、筆者が動物病院で働いていたときも「車に置いて戻ってきたら愛犬の様子がおかしかった」と駆け込んできた方がいました。
この時はまだ4月の終わり。熱中症と診断されたあと、飼い主さんも「この季節にも熱中症になるなんて…」と驚かれていましたよ。
春に限ったことではありませんが、「人と動物の適温は違う」ということを常に忘れないようにしましょう。
では次に、春に犬や猫が熱中症にならないようにするための対策方法をご紹介します!
春にペットを熱中症から守る対策
ここからは、春の季節に犬や猫などのペットを熱中症から守るための対策をご紹介します。
先ほどの話でもご理解いただけたかと思いますが、油断は大敵!
日頃から、しっかりと対策を行ってくださいね。
対策1:部屋の通気をよくする
犬や猫を春の熱中症から守るためには、部屋の風通しをよくしておくことが重要です。
窓や部屋のドアはペットが外に脱走してしまわないように対策をした上で、できる限り開けた状態にしましょう。
最近は「季節外れの真夏日」と言われるような日も多かったですよね。
こうした日にはエアコンも使って、犬や猫が過ごしやすい室温を保てるように意識してください。
エアコンをつけるほどではない気温の場合にも、窓から風が入るようにしてくださいね。
とはいえ、先ほども少し触れたように花粉症の場合にはどうしたら良いのか……困りますよね。
確かに花粉は、部屋に持ち込まれるもののほとんどが窓からの侵入なのだそうです。
しかし、レースカーテンを使うことによって約40%も部屋に入る花粉を減らすことができるそうですよ!
花粉キャッチ機能のあるレースカーテンは多く販売されています。
これらをうまく利用しながら、部屋の風通しをよくしていきましょう!
犬や猫のペットが、自分で涼しい場所に移動できるようにしておくことも忘れないでくださいね。
対策2:水はいつでも飲めるように
夏場は「ペットの飲み水を切らさないように」と気をつけていても、春にはうっかりしてしまう飼い主さんもいるかもしれませんね。
しかし、「いつでも新鮮な水を飲めるようにする」というのは、1年を通して忘れてはいけません!
飲み水はペットがよく過ごしていて目に入りやすい場所に設置するのがオススメです。
ただし、日当たりの良い場所だと水が傷んでしまうこともあるので注意しましょう。
いつでも新鮮なお水をあげるために、自動給水器を使うのも良いですね!
故障などでお水が出なくなることも考えて、飼い主さんの不在時には普通のお皿でもお水を用意しておくと安心です。
対策3:冷感マットを敷いておく
夏に冷感マットを敷いておく飼い主さんでも、春にはまだ用意していないかもしれませんね。
しかし何度も繰り返すように、換毛が済んでいない春こそ熱中症に気をつけたい季節!
「早い」と思うかもしれませんが、ワンちゃん猫ちゃんの過ごす部屋には冷感マットを敷いておきましょう。
春の熱中症対策についてお話しました。
しかし、中には対策を行なっていても熱中症になってしまう場合もあるかと思います。
もしも愛犬や愛猫が熱中症になってしまった時、飼い主はどのように対処すれば良いのでしょう?
ペットが熱中症になった時の応急処置
そもそも、犬や猫が熱中症になるとどのような症状が見られるのでしょうか。
さまざまな症状が見られますが、飼い主さんが目視で気づきやすいのは下記の症状です。
- 呼吸が荒い
- よだれが多い
- ボーっとしたりふらついたりしている
- ぐったりして元気がない
このような症状が見られた場合、熱中症に陥っている可能性が高いので注意が必要です。
ここからは、犬や猫が熱中症になった時の応急処置法についてご紹介します。
あくまでも応急処置ですので、この処置を行ったあとは速やかに動物病院へ連れていきましょう。
応急処置法
ペットが熱中症になった時は、とにかく体を冷やすことが重要です。
とはいえ、急激に冷やしてしまうとショックを起こすことも考えられます。
まずは、常温の水を足元から少しずつ全身にかけていきましょう。
水をかけたら、保冷剤や氷のうでさらに体を冷やしましょう。
この時、太い血管のある下記の箇所を冷やすのが効果的です。
- 喉もと
- 脇の下
- 太ももの付け根
体を冷やしたら、うちわや扇風機を使ってペットの体に風を送ってください。
水も自力で飲むようなら飲ませていただきたいのですが、窒息を防ぐためにも無理に飲ませるのは絶対にやめましょう!
応急処置での注意点
先ほど、「とにかく体を冷やすことが大切」とお話しました。
しかし、冷やし過ぎてしまうと血管が収縮して血流が正しく行われなくなることもあり得ます。
急に冷水をかけたり、冷たい水の中にペットを入れたりしないように注意してください。
そして、応急処置を行ったらすぐに近所の動物病院へ連れていきましょう。
「少し落ち着いたかな?」と感じても、飼い主の気づかない部分にダメージを負っていることも考えられます。
自己判断は避けて、すぐに獣医師に診てもらってくださいね。
春は人もペットも気持ちよく
春にペットを熱中症から防ぐためのポイントや応急処置について、お話しました。
長く寒い冬が明けて、過ごしやすくなるこの季節。
せっかくなら飼い主もペットも気持ちよく過ごしていきたいですよね。
「まだ春だから大丈夫」と安心しきらずに熱中症対策を行なって、人もペットも双方が気持ちよく過ごせるように意識しましょう。
また、このような不測の事態に備えて、ペット保険に入っておくこともおすすめですよ。
ペット保険を選ぶポイントは別の記事で詳しくご紹介しています。ぜひ、併せてお読みくださいね!